先日、ななさんの記事「みなし墓地。」というタイトルで、管理者不在の墓所からの改葬についての疑問が投げかけられました
みなし墓地というのは戦前から存在する墓地のことで、昭和23年に施行された墓地、埋葬等に関する法律で規制される以前からある墓地のため、そのように呼ばれています
みなし墓地は、昔の地域の入会地(共有地)に存在する墓地が多いのですが、一般の人は「地域」という意味で「部落墓地」と呼んでいることが多い
私も大抵は「部落墓地」と呼んでます
こうした墓地からの改葬について思案してらっしゃるということでした
無縁化を避けるために遺骨(墓)の行く末を案じるのはご立派なことです
私は、4年前に引退するまでの10年間を寺院寺務長として墓地や葬儀、供養を含めて寺院を統括し、同時に行政書士、FPとして親和性の高い改葬、相続、遺産分割、人探し等を業務としておこなってきましたので、多少の知見があります
以下、個別案件ですが、一般論として経験談を交えて書いてみます
お役に立てれば幸いです

この問題のポイントは4つあります
1. 改葬手続きの問題
改葬を専門に行う士業の方もいますが、実は個人でも簡単にできます
まず遺骨の受け入れ先を前もって決めてから、現在の墓地がある自治体(市区町村)に問い合わせ改葬許可申請書を入手する(HPからダウンロードできる場合有り)
それを見ればどんな情報を集めればよいかが分かります(埋蔵された故人の姓名、生年月日、死亡日、埋葬もしくは火葬日等)
この申請書を窓口に出すと基本的にすぐに許可が出ます(数骨あっても300円程度)
郵送も可能です
現在納骨されている遺骨(古いものは土や砂になっているものがあると思います)をできる限り調べて記入することになりますが、分からないところは「不詳」と書いておけば問題ありません
墓誌を参考にするか、戸籍を遡って死亡日等を調べて記入するという方法が考えられます
だいたい、会ったこともない古い先祖の納骨(昔なら埋葬)を何年何月何日にしたのかなんて分かるはずがありませんから、調べても分からないことは「不詳」で済ませます
みなし墓地の場合、元々地域コミュニティが管理してきて、〇〇委員会という登記なき団体に管理されている場合もありますが、具体的な墓地管理者がいない場合もあります
管理者がいない場合「埋蔵証明」を誰かに貰って埋蔵されている遺骨があることを証明してもらうことができません
その場合、個人所有地のみなし墓地と同様に、自分で自分の墓地の中の埋蔵遺骨の証明書を作ることになります
ちなみに改葬許可証とか埋蔵証明書は全国共通の雛型がある訳ではなく地域によってばらばらで、私の印象としてはあまり厳格なものではありません
現地の自治体(市民課とか戸籍課とか)に確認すると良いでしょう
2. 宗教上の問題
遺骨を移動(改葬)したり墓仕舞いをするときは坊さんを呼んで閉眼供養(魂抜き)をしますが、やらなくても支障はありません(心の問題です)
御布施として3~5万位でしょうか?
私としては、会ったこともない坊さんや派遣坊主に読経を頼むくらいなら、献花焼香して手を合わせるくらいで良いと思います
3. 墓石、外柵、カロートの処分という物理的問題
石材店にやらせますが一般的に1㎡あたり10万円かかると言われます
傾斜地や狭小地なら別料金が発生するかも知れません
石屋によってピンキリです
彼らも葬儀屋同様、商売柄人当たりが良いことが多いですが、営利目的ですからときにはボッタくりもあります
元々がそういう業界なのです
4. 土地(墓所)所有権の問題
寺院墓地や公営墓地の場合、墓仕舞いをしたら原状回復して管理者に返却すれば終了です(債権債務無し)
宗教法人の名義を借りて運営する民間墓地も同様です
これは、使用していた墓所が所有権に基づくものではなく永代使用権という賃借権に基づくものだからです
そして使用していた墓所を返還するときには、これまで払ってきた永代使用料や年間管理料が返金されることはありません
数十年も管理料を払ってきたけど、「我が家は墓の承継者に恵まれなかった」なんてこともあります
少子化時代にはザラな話です
長男長女が結婚して墓が2つになったというケースも多いです
跡取りがいないため墓所を返還したいという檀家のために、墓所返還と交換条件で境内地の永代供養墓(合葬墓)へ将来夫婦2人無料で入骨できる覚書(念書)を作ってあげたこともありました
みなし墓地の場合、墓所が地域住人の共有になっている可能性が高い
一度登記簿で確認すると良いと思います
墓所の所有者(共有名義)だった場合、遺骨を改葬して墓仕舞いしても土地の権利は残ります(二束三文だと思いますが)
以前、みなし墓地の所有権を地元寺院に禅譲するためのプロジェクトを行ったことがあります
司法書士に依頼し、戸籍を辿りながら地権者(もしくは相続人)を探す事業には多額の費用と時間がかかりました(全国に散らばっていたからです)
そして辿り着いた地権者(もしくは相続人)に無償で寺院に土地(墓地)の所有権を贈与する承諾を得るわけですから極めて困難なプロジェクトだったわけです
中にはヤクザ者が「所有権を譲るのなら金を払え」と要求することもあったのです
しかし最終的には墓地は綺麗に整備され権利関係も明確になりました
現在の墓所を墓仕舞いした場合、その土地の占有を離れることになりますから、土地の所有権が曖昧になるリスクがあるかも知れません(登記簿に記名がなかった場合)
ただ経済的価値は多分無いだろうな?と想像します
改葬に詳しい司法書士に相談するのが良いですね
最後に、墓地に関してはセンシティブな部分もあり、また慣習で成り立つところもありますから(当てになるかどうかわかりませんが)地元の実力者や同じ墓地に墓を持つ人に相談するのも良いと思います
ただ近隣の石材店や寺院に問い合わせてもはっきりしないというのは、相手がそうした事例をあまり踏んでいない可能性があるのでは?と思います
数多くの事例を知っている石材店や寺院もありますが、ルーティーンに流され勉強不足の業者や寺も多くいるのが現状です
墓の近隣に住む地元の人には元々改葬ニーズがないため聞いても分からないかも知れません
もし墓地全体を束ねる管理者がいない場合、それぞれの墓所を個人で代々管理しているということになります
個人管理の墓地であれば誰を名義人(祭祀主催者)にしてどこかに届けるという仕組みはありません
親族の誰かの名前で、親族の誰かが中心になって改葬手続きを勧めれば良いだけです
その場合、自治体によっては民法上の相続人全員の同意書を求める場合もあり得ます
複数の墓所地権者で作る〇〇委員会のような組合を作って管理していることがありますが、それは近隣の寺院を取り込んでビジネスとして成り立っている場合だと思います
実際に、組合を作って墓地管理をし、新規墓地契約者が現れると寺院をフロントにして迂回入金された永代使用料を使って毎年慰安旅行に行ってる団体もあるくらいです
今回の一番良い方法は、墓地所在地の市区町村役場の担当課に問い合わせることです
改葬を検討しているが、昔のみなし墓地(部落墓地)のため管理者不在で遺骨の埋蔵証明が取れないけどどうすれば良いか?と問い合わせれば答えは見つかります
個人で証明書を作るか、無しで済ませるかだと思いますが・・
司法書士や石屋と違って営利性がないから丁寧に教えてくれると思います
そして改葬許可さえ取ってしまえば、期限がありませんから将来の都合の良いときに遺骨を取り出し、墓石を取り壊せば良いのです
ちなみに遺骨は自分で墓のふたを開けて取り出すこともできます
土葬だった時代の遺骨はもう見つからないから土を少量持ち帰るという手はありますが・・
骨壺の中の遺骨が水浸しになっていたなんてこともあるかも知れません
昔も今も骨壺に名前も入れないで納骨をしてしまう事例が多くありますから、取り出した遺骨が誰のものであるか分からないなんてこともあるでしょう(後からはもう調べようがありませんが)
ちなみに改葬許可を取らずにこっそり遺骨を墓から取り出して持ち帰ろうと思えばできないことはないですが、受け入れ先へは改葬許可証と遺骨はセットになりますから、許可証が無ければ受け入れてもらえません(罰則もありません)
ところで私の経験した事例ですが、寺院墓地の納骨堂に遺骨を保管していた方がいました
経済的に窮して遺骨保管料が負担であるから自宅に引き取りたいという申し出を受けました
これも遺骨の移動ですから改葬になります
問題は、自宅保管というのが遺骨の受け入れ先として改葬許可が下りるかどうかの問題でした
私が役所の担当課に問い合わせたところ、多分事例が無かったのでしょう、いったん保留となってしばらくしてから折り返しの電話がありました
申請頂ければ許可を出すとのことでした
おそらく昨今の葬儀後に遺骨を自宅に置いておく手元供養が増えてきている現状に鑑みそのような判断をしたのではないかと推測します
墓地行政は時代とともに変化しています
裕次郎が亡くなった頃は海への散骨は禁止されていましたが、今や海洋葬、樹木葬どころか宇宙葬まであります
まさに多様化の時代です
最後に、全国には多くの霊園がありますが、霊園管理者(地方公共団体、宗教法人)が一番嫌がることは「無縁化」です
無縁化する理由は、①経済的問題、②家族構成の問題、③距離の問題、④精神的問題(無関心)等が考えられますが、墓地管理料が止まり墓は荒れ果てることになります
ですから墓地管理者は新規で墓地を建てた人、代替わりで墓地名義人(民法上は祭祀主催者と言います)が変わる場合には本籍地入り住民票の添付を義務付けることが多いです
本籍地入りにすれば住所移転後5年を経過しても戸籍の附票で移転先を追うことができるからです
宗教上、無縁化した霊は餓鬼道へ落ちるとも言われ、寺院が無縁墓(三界万霊塔)を作り、年一回施餓鬼会を施し地域の浮遊霊供養を行うのもそれが理由です
地縁を離れて墓仕舞いする人は今後ますます増えると思います
自家の墓をほったらかしにしても罰則規定はありませんが、一般的には霊園管理者から墓地管理料の督促が来るくらいです
ただ実際にはどこの霊園も、寺院墓地も公営霊園も、墓地管理料が途絶え、督促しても反応なし、なんて事例が全体の2~3割もあると聞いたことがあります
やっと居場所を突き止め督促すると逆切れなんてこともあるくらいです
経済的理由を嚆矢に先祖供養ひいてはお墓に対して無関心になる人が今後多くなると予想しています
まだまだ書き足りないところもありますが、全体像をイメージされることで少しでもお役に立てればと思います
長くなりましたが、ご参考になればと思いま